将来への提案

■新築空き家の活用

6月28日に総務庁から発表された「平成10年住宅・土地統計調査」の速報報道には驚かされた。予測はしていたとはいえバブルのツケがここまで波及していたとはいえ、空き家の増え方が唖然としてしまうほどの数値だった。 住宅ストックは次第に増加していたとはいえ、比較的安定して推移していた経緯がある。多くても10パーセント以内に収まり、新規供給が多くても住み替えなどにより安定して更新されていくのが今までの経過でした。しかし、今回の調査結果では、ニーズとは関係なく住宅が供給されたことを裏付けました。

本来は不動産業者にしても市場調査をして住宅を建設します。従って、売れ残ったとしても1戸か2戸で、少し時間を架ければ売却できるのですが、今回は土地投機とその価格の暴落と重なって、土地の損を取り戻す為にも建物を付けて販売をという動きと、抱え込んだ土地を処分しきれないで住宅を付けることで不動産の流動化を促すようにと、土地暴落の結果を隠匿するような意図でも住宅が供給されたように思われます。加えて、庶民を襲ったリストラの波。不況に対する不安は住宅の更新を抑制し、急速に住宅需要も冷え込みました。

公営住宅を管理していると気づきますが、バブル経済がはじけてから公営住宅に対する申請件数が急増しているのです。私の知る限りでは平成4年あたりから急増し始めており、今年も伸び続けているようです。公営住宅対象世帯が25パーセント以下の所得にも関わらず延びていることは、それだけ所得の減少する世帯が多くなったことを感じます。

住宅空き家数の推移(住宅統計調査)
住宅空き家数の推移

とはいえ、公営住宅をこれ以上増やすには昨今の財政事情では困難ですし、今後世帯数の低下が予想される状況の中で、新たに公営住宅を増加させるのも危険です。そこで、提案ですが、公営住宅対象世帯に対する家賃補助をしては如何でしょう。国は民間の賃貸住宅を借り入れて公営住宅に活用することを勧めていますが、借り入れることは長期の家賃保証を意味します。従って、公営住宅のニーズがなくなった場合には空き家が発生し、家賃保証が持ち出しになります。

借上公営住宅は基本的に公営住宅ニーズの継続する利便地区で、公営住宅の直接供給が困難な場所に限られるでしょう。それに、所得の低い人ばかりが集まる現在の公営住宅制度の下では、公営住宅そのものが周辺の居住者から敬遠される傾向もありますので、むしろ既存の賃貸住宅に入居しやすくするための家賃補助成策にシフトする方が望ましいと思います。


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■木造老朽住宅の用途廃止

老人が長らく住み続けてきた住宅を撤去させることは心痛ものですが、おそらくその老人も老朽化して設備も整っていない住まいに魅力を感じてはないと思います。たとえば生活圏が離れないで、家賃も同額で、バリアフリーの住宅があれば必ず転居するはずです。転居費用も負担することになりますが、そのために全体の土地活用が出来ない現状を考慮すると大した出費ではないはずです。

転居先に公営住宅が選択できればいいのですが、そのような場合の多くは近くに移転先になりうる公営住宅がないケースが多く、何となく今までは措置し得ないで来たケースが多いでしょう。しかし、法律改正は用途廃止と処分を届けもなくできる術を与えました。つまり、事業主体の判断で団地の活用ができるのですから、その資産の活用方法次第で収入の道もあるのです。従って、老人の居住地近くにある賃貸住宅を借りて済み移らせることも可能になります。賃貸住宅のない場合は持ち家の間借りをするのも手です。

東京都では持ち家高齢者に対して改造資金を補助して高齢者同士で住む事業を展開しています。同じように持ち家を改造して団地に残された高齢者同士が住みあえる住宅を提供するのも、今後介護保険の導入に向けても便利ですし、グループホームやコレクティブハウジングの考え方にも共通するもので、高齢者の住まい方の一つとして試みるのも一考です。


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■公営住宅管理のための原資をつくろう

公営住宅法改正によって用途廃止や処分が可能になった耐用年数を過ぎた団地を定期借地や売却といった方法で活用して原資をつくります。これを基金として家賃補助の原資として利用します。

基本的には永続性を前提とした補助システムを完結させるには、原資となる土地を定期借地などで活用して定期収入を得る方法が適していると思います。郊外に展開する公営住宅の土地は戸建て住宅地としては価値の高い地区になっていると考えられますし、既存宅地ですから都市計画的な規制からも処分には困らない土地になっていると思います。


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