将来への提案

■県営住宅と市町村営住宅の関係

公営住宅法が改正されて、県営住宅と市町村営住宅の区分している理由が不明確になりました。どちらも転入に対する門戸を開いていますし、補助金額の違いによる県が1種、市町村が2種という区分も無くなりましたから、財政事情が許す限りどちらが供給しても利用者にとっては同一になります。ただし、管理主体が異なってきますので条例に基づく家賃の定めや管理の状況などが異なり、現実的には差異が生じることになります。

簡単にいえば、縦割り行政のモデルのような状況が公営住宅法の改正によって生まれたわけですから、矛盾は当たり前です。今後は相互の役割について少し考え方を変えて、建設と利用を区分して考えてみては如何でしょう。たとえば入居者管理は市町村で全て行い、建物管理は県の公社で一本化するなどの方法がとれれば合理的だと思います。そして建設については、県と市町村とで共通の住宅計画を作成し、その計画に基づいて役割分担することになります。


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■土地の処分方法とまちづくりへの寄与

郊外の公営住宅用地の処分をするのに、定期借地権付きの宅地分譲が適していると考えていますが、まだまだ地価も安定していて土地所有が一般的な地方都市では比較的安価な土地を求められるものだから、どうしても利用より所有という意識に行きがちです。
そこで、郊外の定期借地をどう売るかですが、基本的な考え方は以下の三つに集約されると思います。

1 敷地は他の分譲地より大きくする。
都会ほどではないにしろ地方都市でも土地の価格は上昇していますし、宅地分譲の規模にしても次第に縮小しています。従来ですと100坪は当たり前だったのですが、区画整理などでも75坪を目安にしたり60坪ではどうだろうと、次第に規模が縮小しています。大都市では50坪でも良い方でさらに狭くなり、ついには金融公庫の融資を得るための最低限度30坪を基準にする建て売り分譲地もあるほどです。
住宅地の景観として、建物の周りにある程度の緑があり、生け垣で区分され緑豊かな庭園と建物の佇まいがあり、他と違う高級感が生まれる敷地規模といえば最低100坪ではないでしょうか。100坪の敷地を手に入れる為にはやはり定期借地が必要になります。建築限界も地区内で建築協定を結び、壁面線指定をしたり緑地協定を結んだりして互いのプライバシーと全体の住環境のレベルを上げます。

2 環境整備された魅力的な団地づくりをする。
団地整備は住環境を大きく変える力を持っています。緑地や公園機能の取り方、交通のルールづくり、宅地と道路との関係、道路の利用レベルの設定、歩行者と自動車の取り扱い、駐車場の考え方、共有施設の考え方や整備手法など、環境整備に力を入れた団地づくりをすることが大切です。 環境を整備する方法は多様にありますし、最適なデザイナーを選び、将来に渡って好まれる住宅団地をつくることが大切です。できれば団地全体が一定のデザインコードを持ち、景観としての共通性のある建物で構成できると、団地としての格調とまとまりはでてくると思います。

3 コミュニティを高める仕掛けをする。
敷地が100坪であれば隣とのプライバシーも生け垣を多用することで守れそうだが、人間というものはいざ離れ始めるとふと寂しさを感じるもので、近隣とのつきあいも大切になる。とりわけゴミ問題や団地内の公園や道路などの共有物の管理は互いに知恵を出し合って管理することが必要です。その為には敷地のみを定期借地とするのではなく、共有物についても共有の定期借地権を設定して管理の義務を発生させることで、必然的に相互がコミュニケーションをすることになります。
少なくとも50年間の定期借地期間を豊かに過ごすことを目指すためには、相互のコミュニケーションを高めることが大切です。通常行われている自治会的な町内会では共通の資産を管理する視点が欠けており、公共のものはお役所任せになってしまいがちです。折角の定期借地の団地です。全体で管理してその責任を分担することで自分達の環境を守ったり向上させようとする意識も生まれるのではないでしょうか。


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