住まいの情報

都心居住を望む世帯への住宅情報

お台場の住宅地がなぜうけたのか


odaiba.gif 最高倍率200倍に近い公団賃貸住宅がお台場に出現し、都民住宅や公社賃貸住宅など超人気の住宅地として今年オープンした。新交通システム、ゆりかもめの開通と共に賃貸住宅が供給され、引き続き分譲住宅も供給された。新橋からタクシーで千円台で帰れるし、前の海はリゾートとあって、人気は急上昇、多方面からの転入が始まった。

 32階建ての超高層の住宅は、最上階を除いてさほど魅力のあるものではないと思えるのだが、便利さが優先してか、家賃も割安感があったことも手伝い、近年にない人気スポットとなった。仕掛人の力量に敬服すると共に、あまりに都心地区に適正コストの居住地が無かったのかと再確認する思いである。

 実際にモデルルームを見てみると、超高層ではあっても隣同士が近く、覗かれる気配や手すりのあまりの高さで、檻の中に入っているような気分にもなる。ましてやエレベータは法律を厳守して作っているため、四、五台が連続して並び、ヒューマンスケールの感じられない機械的な空間を作ってしまっている。

 よくよく見ると必ずしも好感を持てない作りだが、人気は今も持続している。なぜにお台場に人気が集中したのだろうか、それはたぶん都心に住みたくても住めなかったエネルギーがお台場に集まったと考える方が妥当であろう。千代田区にも文京区にも港区にも住めなかった庶民がお台場に集まった。庶民の居住地としては通勤時間の短縮に始まり、自動車のない生活が実現し、早番、遅番関係なく職場に着くことが出来る。つまり、職住近接が実現する。

 都心地区は実は下町なのだということを認識する必要があった。地価の高いところでは庶民は住めない。しかし、政策的に地価を反映させない建物を供給することで都心は庶民の手に戻るのである。庶民は都心に住みたいと今も思っている。しかし、既成市街地は実際的な活用を度外視した高地価のうねりをうけ疲弊してしまっている。どうやら、お台場の住宅コストが既成市街地の住宅コストに影響を与える時間が必要なようである。

【参考】 臨海副都心情報のホームページ

神田で住む方法


 生鮮食料品を売る店がない。八百屋や肉屋や魚屋がない。電車で新宿のデパートに買い物に行く・・・。話は不可思議な方向に向かっていく。普通の常識が通らない地区があることをこの目で見、この耳で聞くと、ついなるほどなと思ってしまうほど、生活臭のない地区になってしまった。

 町人の街、庶民の街だった神田は何時しか業務の街になってしまっていた。「土地利用の純化」が都市計画の基本理念でもあるかのように唱えられ、商業地域、住居地域、工業地域と色分けされてきた。土地利用の混在が罪悪とされ、住宅地は住宅地らしく、商業地は商業地らしく、工業地は工業地らしくをモットーに戦後の土地利用政策は進んできた。

 それなりに住環境が保たれた住宅地区が、商業集積の高い「○○銀座通り」としてこぞって名乗りを上げ広がった。それが居住とのバランスでヒューマンスケールの規模を保った状態では均衡もとれていたが、次第に市街化が拡大するにつれ、都市の均衡は崩れていった。居住環境が犯されるようになり、都市の純化が叫ばれるようになっていった経緯はあながち理不尽ではなかったのだが、大規模に純化してしまった結果、逆のベクトルが働いてきた。

 人に見合う物差しを「ヒューマンスケール」という。日本語では「人の物差し」であり、手の長さ、体の身長、目の動き、開放感、色の強さ、光の量など体内の五感に共鳴する微妙な反応がこれである。私たちは今、五感に合う街ではなくなった神田を見ているし、五感に合う神田を希求している。そのためには庶民に合う神田に戻す努力が必要になっているのだろう。

青山が好かれるわけ


 何故か東京都港区青山には人が集まる。若者だけではなく老人も中年層も、男女を問わず集まる。そこには生活の臭いがある。夕方の青山通りには初老の夫婦が買い物篭を下げてスーパーに出かける姿がある。裏道には住宅がびっしり詰まっており、しゃれた戸建て住宅やマンションや、その中にブティックも混じって整然としている不思議がある。

 話はフランスのパリ。東京都心の二倍の人口が整然と生活している。八百屋も肉屋も総菜屋も至る所にある。土曜日の市場は各所の広場で賑やかで、都心での不便さは感じない。日本からの旅行者が一遍で好きになってしまうのも、都心での生活が日常的に出来ることと外国人に特別にしないフランクさが、何ともいえずパリの魅力になる。

 最近の店の佇まいや裏道の様子はパリよりも青山の方が数段グレードが上のような気もするくらい青山の質は向上している。青山には商店があり、そして居住が基本的にあることを忘れてはならないし、パリもまたそうであることをまちづくりの基本に考えると、都心居住の魅力は生活の場があることが前提となる。しかし、意外と生活のある中心市街地は失ってしまってるのが現状のようで、貴方の住みたい場所で同好の志のためにまず住みはじめてみることが必要かも。


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