住まいの情報

持ち家取得を考えている世帯への住宅情報

大都市でなぜ持ち家か、今一度考えてみよう


 地価が一定であると仮定すると、土地付き持ち家のメリットはどこにもない。それでも持ち家をと考えている人は、相変わらず心の中で地価が上がると考えているにちがいないし、片意地に子どもに資産を残すのが親の勤めと考えている勤勉な人だろう。自由な間取りが欲しければ定期借地権付き分譲住宅があるし、定期借地権付きコーポラティブだってできる。だからやたら底地権にこだわるのはやめようではないか。

 地価が上昇するメカニズムの基本は土地の需要と供給で、様々な都市機能の集中による土地需要の高まりがなければ供給は一定で、しかも都市機能の分散が起これば地価は低下するのが当然である。そんな背景がある中で、未だに地価が上昇すると思っているのだろうか。首都機能は分散か移転かを議論し、都心居住の復活もお台場や幕張などの埋め立て地を拠点に展開しており、今後、既成市街地の再開発に着手するとしても、世帯総数も減少する住宅需要の低迷する時代がまもなく来るため、それほどの需要も見込めない。

 土地を取得することは永代使用料を払うことで、資産として残す必要のない世帯が増えている中で必ずしも有効な手だてではないし、その分多くの金利を支払うことにもなる。借地や借家を利用したライフスタイルを考えてみてはいかがでしょう。

自分のための持ち家か、次世代のための持ち家か


 子どものために少しでも資産をと考えている世帯では、やはり土地付き持ち家を取得しようとする。子が独立する時期を20年後と仮定すると、そのころには住宅余剰が発生する時期にも整合する。
 すでに都市部でも5%〜10%の空き家を発生させている現状から、欧米に比較して建設の勢いが強い日本の現状からすると、かなりの住宅余剰が発生すると想定できる。居住地の選択が世帯のライフスタイルを基準にして展開してくると、必ずしも都心居住だけではなく郊外の戸建て住宅地にも空き家が発生してくることになる。比較的粗悪なものは捨てられ、良質なものに移行することは容易に想定できる。

 住宅の数が世帯数を上回って以降、着実に居住水準は上昇している。特に持ち家については欧州の居住環境とは遜色のない面積を維持しているし、戸建て住宅やマンションの質も十分海外に対抗できるようになっている。これらの良質な建物の多くは、今後100年以上に渡って活用される建物として認知でき、持ち家ではあるが社会資産として次世代のための社会住宅的な役割を担うことになる。

 あなたは死んで資産を残したとしても、その住宅は転売されるかもしれないし、借家として活用されるかもしれない。住宅が世代を越えて活用するものである以上、これは必然であり、世帯数より住宅数がかなり上回ることが予想される以上、粗悪な住宅であればあるほど命は短くなることも必然である。

新築だけの税金の矛盾


 消費税率が引き上げられる。土地に対してはつかないものの、新築の建物については消費税がかけられる。中古住宅はすでに支払い済みなので免除されるが、これでは車の新車と中古車のイメージによる価格差と同様に利用価値としての住宅の価格が不明瞭になる。これを機会に中古市場がにぎわうとすれば、それも一つの選択肢かもしれないが、住宅価格に消費税がかかるのは不自然である。

 住宅に消費税をかける発想があるのは住宅を耐久消費財としてしか認識していない国の考え方による。住宅が何代にも渡って受け継がれていく社会資産と考えれば、建設時に一時的に5%の負担を迫るのはおかしい。極端な場合、1年分の住宅ローンが増えたことになるのではないか。

 結果論ではあるが、新築物件にのみ消費税がかかるとなると、たちまち中古物件の市場価値が上回ることでもあり、住宅余剰が進む今後の住宅ストックの環境に影響を与えることになる。建物を営繕する意識が高まり、修理や改修のメリットが表面化されるようになり、さらにDIYなどの流行も起こる可能性がある。住まいを使い捨てた時代から長期に活用することを美徳とする意識が起こり、次第に良質な住宅を確保することを善とする考え方が広まってくると考えられる。消費税が「贅沢税」として読み変えると、余剰しつつある中古住宅を顕在化させるための税制度とも見ることは出来ないか。


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