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その8


ーマライゼーション、ノーマライゼーション、ノーマライゼーション

〜 共生社会への変革

 高齢社会の到来は、日本の社会体制が競争社会から共生社会へと変革することを意味している。ハートビル法の成立や公営住宅法の改正、三世代同居に対する金融公庫の融資枠の拡充、在宅介護や医療を支える公的介護保険法、地方分権推進法による市民レベルでの地方自治のうねりなどの法律の支え、さらに高齢者の生活を支える老人保健福祉計画の流れや高齢者居住支援のための地方自治体の動きや、高齢者の資産を活用してのリバースモゲージや高齢者同士の同居のための支援の実践、加えて戸建て住宅用エレベーター開発や高齢者の介護用品の開発普及など、高齢者の居住支援のための多様な展開が現われはじめている。

 直接的な住宅供給の方法としても、高齢者の緊急対応が可能な公営住宅としてのシルバーハウジングや民間賃貸住宅を借り上げて高齢者に提供する特定借上公共賃貸住宅、食事サービスを提供するケアハウスなどの公的住宅供給から、共同生活を前提としたコレクティブハウジングや痴呆老人を家庭的に介護するグループホームなどの新たな高齢者への住宅供給方法の研究など、高齢者の居住の安定を確保するための多様な方策が検討されはじめている。こうした動きの中で最も重要な点は、これらの行動が結果として高齢者との共存・共生を推進することになり、高齢者の居住の問題が個々の家族の問題ではなく、社会的な問題であり、高齢者も含めて居住する地域の問題であり、その共生が地域の役割であることの認識を市民が持ちはじめていることに他ならない。

 高齢化が高齢者だけの問題ではなく、市民一人一人が自らの問題として捉える意識が育ち、相互扶助の社会を必要とする急速な高齢社会が世代を超え、特に今後の社会に発言権を強くする若い世代に広がることが重要である。幸い、日本のヤング層は豊かな時代に育ち、誤解を恐れずに言うと、言わば「衣食足りて礼節を知る」世代である。多くのボランティアが育つ土壌が若者の意識の中にあり、今後の社会を支える大きな原動力となる。

 厚生省の予測では団塊世代が高齢者の仲間入りをする2020年頃には四人に一人が、そして団塊ジュニアが高齢者になる2050年頃には三人に一人が高齢者になると従来の予測を見直した。今回の予測はきわめて現実的な数値であり、希望的観測で出生率を調整した平成4年の予測とは大きく異なっている。この現実が発表されてから報道や研究者達の高齢社会への対応が現実的なものになったようだ。高齢化に対する危機感を煽るような発言がトーンダウンし、具体的に何をすべきかの議論に移ってきた。

 間違いなく世界一の長寿社会が生まれることは既にわかっているのだから、我々は何をなすべきなのか、大いに進歩的な議論を重ねなければならない。長寿社会での人生を、より豊かに生き生きと生きる為に、年齢に制約されることなく各々の人生が全うできる社会を、そして生まれてから死ぬまでを、社会の中での役割を担える生き甲斐を見つけつつ生きることが人の幸せであり、人生の目的でもあることを念じながら。

(秋元孝夫)


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