問題・課題

■公営住宅の現状

戦後、一心不乱に供給し続けた公営住宅もオイルショックをピークに急速に減衰し、今では公営住宅法が発足した昭和26年並になってしまいました。

公営住宅の建設戸数の推移
公営住宅の建設戸数推移

戦後の工業国としての発展を支えるために供給されてきた公営住宅ですから、石炭から石油への燃料依存の変化や第二次産業が東南アジアに移動するに従って、次第に第三次産業を中心とした都市型の生活が主体の住宅づくりになっていきました。しかし、産業構造の変化に公営住宅は柔軟に対応できませんでした。

多くの地方都市で公営住宅の余剰が問題になっています。とりわけ、郊外に大規模に建設された簡平・簡二住宅が入居者が歯抜け状態になって、高齢者が取り残された状況になっています。一方で、中心市街地に近い公営住宅には小規模ではあっても空き家はすぐに埋まっているのですから、入居者のニーズが住宅を選別する時代に入ったことを物語っています。


もくじに戻る


■居住意識と公的賃貸住宅

戦後、持ち家政策を進めることで住宅のストックも世帯数を超え、たぶん今回の住宅・宅地実態調査では地方レベルで見ても空き家率が10%(7月に速報)を超えてしまうのではないかと思っているのですが、余剰の住宅ストックの活用が課題になり、新設よりも改造が主要なテーマとして浮かび上がってきそうな気がします。

それに、世帯の小規模化がますます進んで、若い世代はこぞって都心部近くに居住し始め、郊外の戸建て住宅にも高齢者のみの世帯が取り残されているという構図が見えてきます。都心部の再生の遅れた地域には高齢者が取り残されていますし、失業やリストラで住宅を失った単身中高年者がホームレスで行き場を失っている市街地の様子は、現状の隅田川や新宿副都心を見れば想像が付きますし、最近では街規模でも神社などに住み着いているホームレスが居ることを見聞きします。

住宅を取りまく環境の変化はライフサイクルや世代のボリュームなどで大きく変化するようです。経済の変化も左右しますが、今後は高齢化や少子化が住宅事情を大きく変化させるでしょう。こうした環境の変化の中で国民の居住に対する意識も大きく変わると考えられます。すでに親が持ち家を持っている子供世代には、あまり持ち家に対する欲求も少ないでしょう。長男長女世代の意識は団塊世代の意識とは大きく異なっているのです。時代は新しい波に乗っているように感じられます。こうした中で将来に向けた議論が出きればいいと思います。


もくじに戻る



< 前に戻る      ●       次へ進む >