■ 談話室7つのテーマ ■ |
1 コミュニティのありかた
集まって住むことが不得手な教育を受けてしまったと思っています。戦後の持ち家政策は、一国一城の主をイメージさせ何とも広大な緑地や農地を宅地に変身させてきたのでしょう。土地を有効に使っていればこれほど拡大せずに済んだのに…。家族は核家族化から核分裂の時代に入りました。離婚や未婚での子育て世帯も多くなりました。子育てに相談者もいない環境があり、子育てに役割分担する家族もいなくなりました。
こんな時にコミュニティが大切になります。戦後の隣同士の助け合いは食糧難の栄養価の偏りに対する補填行為で、おかずのやりとりが一般的でした。いまは、互いの生活時間の融通や得意不得意という生活行為の互助が基本になります。子育て相談のみならず防犯や家の修理、電化製品の組立など共生による助け合いは様々です。
2 農と居住、あるいは農と別荘
ドイツでは野菜などの生産の半分が家庭菜園で行われているのです。戦時中戦後の食糧不足を補うために、国家事業として家庭菜園「クラインガルテン」を奨励し、今やドイツ国民の休日の過ごし方になっています。河川敷や住宅の周りはもとより、大規模なクラインガルテンエリアもあり、中にはレストランもあるという規模のものもあります。
日本でも長屋だって裏庭があり、瓜や茄子が植えてあったし、ネギくらいは手前の庭でまかなっていた時代があった。しかし、雨の当たらないバルコニーでは都会の忙しい生活では何も育てられないのが現実で、できれば裏庭の熟れたトマトをかじりながら冷たい井戸の水で足を冷やしながら甲斐駒や八ヶ岳を眺めてみたいと思いませんか。そのためには農と居住が一緒でないと…。
3 別荘か永住か
出生率がこのまま進むと2010年頃から世帯数も減少すると予想され、そうなると家も余って、1世帯に2軒というのも当たり前になると思われ、そうなるとどちらが別荘で本宅なのか判らなくなる時代が来るのです。つまり、家を選ぶのではなく、ライフスタイルに家がついてくる時代になり、別荘なのか永住なのかという議論はあまり意味を持たなくなると考えます。
4 地元との交流はいかに
地元の人との交流は必然的に生まれてきます。これは自然につきあいが生まれるもので、特別地元に入らねばならぬと言う無理な図式だけはさけたいと考えています。ネイティブ白州にしても、都会をそのまま持ち込まれても迷惑だし、かといって疎遠にされるのもかなわないでしょうし、その逆もまた同じです。だからまずは5世帯のコミュニティを母胎にして交流するのが簡便な方法だろうと思います。
5 戸建てか共同化か
ドイツの環境共生を勉強する機会があり、ミュンヘン郊外でDIYによりエコロジー集合住宅を作り上げ、賞賛を得た「ペルラッハの長屋」があります。家族構成も目的も違う人たちが住み分けるためには戸建て住宅が便利ですが、省エネルギーや太陽熱利用や雨水利用などのエネルギー供給、ゴミ処理や汚水処理などの処理システム、維持管理や安全対策などを考慮すると集合住宅のほうがより充実していると思います。
6 環境共生への取り組みについて
自然環境の中に建物を建て、人間が共生するのだから環境に対するマナーは当然守らなければならない。環境共生は当然で、エネルギーにしても消費を前提とするのではなく生産して消費することを考え、ソーラー利用や風の活用、雨水利用や排水の浄化システムの検討など積極的に取り組むことが必要になります。
7 土地のコストと建物コスト
土地は本来コストのかからないものの一つで、生産行為なしに存在する物。従って必要な規模と農地が隣接しているという環境があれば由とします。だから土地にはコストはかけないのが本来の姿だと考えていますし、考え方を変えれば地主さんから借地することだっていいし、最近の定期借地の考え方を適用することができれば、その方が合理的でもあると思っています。本当は公的な土地が借りられて共同利用ができればこの上ないのですが、白州の農協などに声をかけることもしてみるといいかもしれません。
秋元建築研究所 秋元孝夫